サクラマス、遡上したら餌を食べる?or食べない?問題について

トラウトフィッシングの世界にはまった人が必ず一度は考察するであろう問題の一つに、河川に遡上したサクラマスが餌を食べるのか?食べないのか?というものがあると思います。北海道よりも本州のサクラアングラーの間で活発に議論されてきた内容かと思いますが、今回は遡上後のサクラマスの食性にスポットを当てて考えていきたいと思います。

 

雑誌などで目にする議論を見ると、両派の意見はだいたいこんな感じだと思います。

■食べる派

・2~3月に海から遡上して産卵の9月頃まで全く餌を食べないということは普通に考えづらい

・ルアーや餌釣りで実際に釣れている以上、餌だってちゃんと食べてるはずだ!

 

■食べない派

・鮭だって遡上後に餌を食べないんだから、サクラマスだって同じような生態のはず

・遡上後のサクラマスは胃に消化酵素が分泌されなくなるので、物を食べることが出来ないという文献が出ている!(ちなみに、函館にキャンパスを持つ某国立大学水産学部の講義では、専門の先生がそんな文献は見たことないって言ってました...)

・釣れるサクラマスは条件反射的にルアーに反応してくるので、食性に基づく捕食行動の結果ではない

 

私も学生の時分に色々調べてみましたが、こうした議論の多くは経験則に基づいた憶測や、小鮎を追い回している姿を目撃した!といった個人的な経験ばかりで、文献などの出所が明示された議論はあまり展開されていなかったように思います。

で、調べてみたら面白い研究報告が水産学会誌に掲載されていたのでご紹介したいと思います。

 

 

田子 泰彦   「神通川と庄川におけるサクラマス親魚の遡上生態」 日本水産学会誌 66(1),44-49 (2000)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan1932/66/1/66_1_44/_article/-char/ja/

これは富山県の神通川と庄川で1991年~1995年にかけて、毎年4-6月に行われたサクラマス遡上状況の調査の結果です。注目すべきは捕獲個体の胃内容物に関する記述の部分で、期間を通して空胃(何も食べていない)個体は80.2%、残りの19.8%は餌を食べていたことが明らかになっています。さらに、その胃内容物の主なものはというと、水生昆虫のヒゲナガカワトビケラ、アユ、ヨシノボリ、消化の進んだ魚の骨...などなど。

 

思いっきり餌食っとるがな!!!!

 

とこの文献を見つけた時は驚きました。この結果から遡上後もサクラマスは餌を食べていることが分かります。ただ、詳しく読んでもらえたら分かることですが、遡上魚を捕獲して飼育すると産卵期まで餌を摂らないことや、7~8月に捕獲された個体は全て空胃だったことなどから、遡上後にほとんど餌を摂ることは無くなる、と推定されています。

 

しかしながら、神通川では早い個体で2月から遡上が始まっていると本文中にも記載があります。この調査は4~6月に実施されており、捕獲された個体の中には遡上からかなり時間が経った個体も多く含まれていることと思われます。ここから先はあくまで私の推測ですが、遡上直後の個体はもっと活発に捕食行動をとっているのではないかと考えています。それが遡上して時間が経ち、性成熟が進むにつれて食性が落ちていくのではないでしょうか。

 

 

今回の文献はあくまで神通川と庄川における結果ですが、遡上後のサクラマスが餌を摂っているという動かぬ証拠の一つです。しかしながら積極的に餌を摂っている訳ではないようなので、やはりサクラマスに口を使わせるのは至難の業である、ということなのでしょうね。