土曜の丑の日のうなぎ消費の現状から、持続可能性について考えてみる

どうも、いわな坊主です。今回は丑の日のウナギの売り場を見てて思ったことをつらつらと書いてみます。仕事柄スーパーなどの売り場にはよく足を運ぶのですが、今の小売店の状況が続けば近い将来ウナギは私たちのような普通のサラリーマンでは購入できないような高級品になると危機感を抱いています。長文になりますが、暇つぶし程度に付き合っていただけると嬉しいです。

SDGsとは何ぞや?

さて、ウナギの話に入る前に、「SDGs」について少し触れておきたいと思います。最近メディアでも取り上げられることが増えてきたこの「SDGs」という言葉は、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を取った略称です。2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。外務省のリンクを貼っておきますので、詳細はそちらから。

JAPAN SDGs Action Platform(外務省)

この中の14番目の目標が「海の豊かさを守ろう」という水産業に関わるもので、「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用すること」を目標として掲げています。分かりやすく言うと、個々の生物が絶滅しないように守りながら、将来にわたってみんなが食べられるように残していきましょう、ってことですね。

日本のうなぎの基本的な生態と資源の現状について

さて、SDGsの中身についてはある程度理解してもらえたかと思うので、日本のウナギの現状について触れていきたいと思います。以下のリンクに水産庁が資料を公開しているので、そちらから抜粋して解説していきます。

ウナギに関する情報:水産庁

こちらのリンクの中に「うなぎをめぐる状況と対策について(2021年7月)」という資料に詳しい記載があるので参照してください。

うなぎをめぐる状況と対策について(2021年7月)

ご存知の方も多いかもしれませんが、ウナギは日本のはるか南のマリアナ海溝付近で生まれ、黒潮に乗って日本や台湾、中国などの沿岸にやってきます。レプトセファルスと呼ばれる葉っぱの様な特徴的な形態で運ばれてきて、河川の河口付近にやってくる頃にはシラスウナギと呼ばれる親ウナギに近い形態に変態します。このシラスウナギをつかまえて養殖場に移して育成し、それらが加工されスーパーなどで蒲焼きとなって売られるわけです。

ウナギ稚魚の漁獲量を見てみると、昭和30年代には200トン前後の漁獲がありましたが、昭和38年をピークに減少に転じ、平成に入ってからは30トンから5トンの間で変動しながら推移しています。特にここ10年ほどは漁獲量が極めて少ない状況にあります。ウナギの資源減少の要因については、「海洋環境の変動、親ウナギやシラスウナギの過剰な漁獲、生息環境の悪化が指摘」とありますが、生態については未解明な部分が多く詳細は不明瞭なようです。しかしながら、2014年に「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い」とされる「絶滅危惧1B種」として国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに掲載されたことから、保全の対策が必要であることは間違いありません。

また、こうした二ホンウナギの漁獲減少を補うために輸入により国内供給量を確保してきましたが、6ページ目の「我が国におけるウナギ供給量の推移」を見てみると平成20年ごろを境に輸入量が極端に減少しています。それまで輸入されていたヨーロッパウナギの資源状況が乱獲により悪化し、ワシントン条約で貿易規制がかかったためです。このヨーロッパウナギは二ホンウナギよりも絶滅の危険性が高いとされる「絶滅危惧1A種」に指定されており、輸出規制がかかった後も資源が回復していない状況です。また、このヨーロッパウナギの代替資源としてアメリカウナギが輸入品種として注目されましたが、こちらも現在は二ホンウナギと同じく「絶滅危惧1B種」に指定されています。つまり、日本人のウナギ消費によって、世界のうなぎが絶滅の危機に瀕している、ということです。非常に恥ずかしい事態だと思うのは私だけでしょうか?とても持続可能な状況とは思えません。

※そんな馬鹿な話があるか!スーパーのウナギは国産と中国産ばっかりでアメリカ産やヨーロッパ産なんて見たことないわ!と仰る方もいるかもしれません。実は、これらのアメリカやヨーロッパで採取されたウナギの種苗は中国に持ち込まれて養殖されます。養殖した国は中国なので「中国産」表記でスーパーの店頭に並ぶため、お店で見ただけでは実際にそのウナギがどこの国の出身なのかは分かりません。

実際の漁獲量と池入れ割当量(漁獲制限)のギャップ

ウナギの資源保護を目的に「池入れ量制限」というものが実施されていて、これは養殖のために養殖池に導入するシラスウナギの量(池入れ量)を制限する規制です。一見するとウナギの保護に役立ちそうな取り決めですが…

にほんうなぎ種苗の池入れ実績(令和3年6月末まで)

これを見ると、令和3年の全国の池入れ量の割当は21.7トンですが、実際のシラスウナギの池入数量は18.3トンです。実際の池入数量の方が池入れ割当量を下回っています。平成28年までの池入れ割当量と実際の池入数量の関係を見ると、常に池入数量の方が割当量を下回っていて、池入れ割当は毎年21.7トンです。また、この池入れ割当量による漁獲規制は二ホンウナギがIUCNから絶滅危惧種に指定された2014年から実施されていますが、その当時の漁獲量から回復する兆しは一切見られません。「21.7トン」の池入れ割当量が適切ではないと思うのは私だけでしょうか。

また、シラスウナギの漁獲量と池入数量は、漁業者や養殖業者が国に報告する義務がありますが、令和2年漁期の数量を見ると、漁獲報告10.8トン、輸入量3.0トンに対し、池入数量は20.1トンとなっています。漁獲と輸入を足すと13.8トン、池入数量との差が6.3トン(池入数量全体の30%)もあります。この6.3トンのうなぎは一体どこからやってきたのでしょうか。

漁業者による過少報告なども指摘されていますが、シラスウナギ漁は以前から暴力団関係者による非合法な漁獲や輸入が問題視されていて、密漁や密輸により池入れされているものが相当数含まれていると考えられます。仮に令和2年度の池入れ数量のうち出所不明な6.3トンが密漁によって漁獲されているとすると、スーパーに並んでいる国産ウナギのうち3割は非合法に漁獲されたうなぎだということになります。なかなかぞっとする話です。これらの違法漁業をいかにして潰していくか、ということもウナギの保護を進めるうえで大きな課題となっています。

消費者である私たちにできること

色々と問題を列挙してきましたが、そんなん一般人に言われてもどーにもならんがな!って思うでしょ?でも、我々消費者には商品を選ぶ権利があり、選挙と同じで商品を選ぶことによって売り手の動きを変えることができます。

それでも「安くウナギを食いたい!」と思う人が大多数だからなかなか状況が変わらないのかもしれませんが、現状維持でウナギを食べ続けることで将来的にウナギが食べられなくなる可能性は極めて高いです。そして、貴方が買ったウナギの売り上げ金の一部は、サプライチェーンを通じて違法漁業を行っている暴力団関係者の活動資金になっているかもしれません。店頭に出ているウナギの3割は出所不明、いつどこで密漁されたウナギを買っても不思議ではありません。そんな現状を知ってなお、貴方はウナギを買いますか?と問いたい。

それと、スーパーのウナギしか食べたことが無い方は、地元で長くやってる料理屋さんが出すウナギを食べてみてください。私も親父に教えてもらった料理屋さんで天然ウナギの白焼きをいただいたことがありますが、皮はパリパリ、身はふっくら、お酒が進むのなんの。(笑)

出来ることは多くありませんが、多少なりとも行動を変えることでウナギの消費を変えることはできるはずです。食べる頻度を少しだけでも落としたり、その分ちょっとだけいいお店で食べるようにしてみたり、あるいは違う食材を丑の日に取り入れてみたり。このウナギ以外の食材を使った丑の日の取り組みついて、北海道のセイコーマートの事例を紹介したいと思います。

セイコーマートの取り組み

ウナギの現状を踏まえて動き始めたのは北海道のコンビニチェーン、セイコーマートです。毎年土用の丑の日に行っていたうな重の販売を取りやめ、代替商品として「サンマ蒲焼重」を販売しています。減少が続くウナギを蒲焼きにするのは我慢して、北海道のおいしいサンマを蒲焼きにして食べましょうと言う提案。2012年から販売を開始して、2020年は約33万食を販売、2012年の3倍まで売り上げが伸びているそうです。こうした取り組みは商品を買うことで応援できます。代替商品で売り上げを伸ばしている様を、同業他社は無視できなくなり、同様の商品が他の企業で販売されるきっかけになります。こいった取り組みが評価されて欲しいと切実に願います。

まぁサンマ自体も今は資源の減少が指摘されていて、イワシなどほかの魚種への転換も検討しなければならないかとは思います。原料費も発売当初よりはだいぶ上がっていることと思いますし。おっと、話が逸れましたね。(笑)

まぁそんなこんなで、ウナギと長い付き合いをするためには私たち消費者の意識から変えていかなければならない部分が多々ある訳です。来年の丑の日は、ちょっと食べ方を見直してみませんか?というお話でした。